ヘルパーによる『看取り』の訪問とは?ご家族とヘルパーが協力してサポート、実際の訪問例ご紹介

身体介護例

ご訪問くださりありがとうございます。

ある末期的な病状のご利用者は、病院などに入院しておられたものの、最後の最後に自宅へ戻ることを希望されることがあります。

人生の最終段階における医療およびケアについては、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本として進めることが最も重要な原則

厚生労働省 【テーマ1】 看取り 参考資料 平成29年3月22日

厚生労働省の資料にもある通り、ご利用者ご本人の決定が尊重されます。

治療による延命を行わず、苦痛や不快感を緩和することに重点をおき(終末期又はターミナルと言われます)残された生活の豊かさを優先させます。

こうしたご利用者のために、ご家族や介護者が本人のそばにいて最期の時まで看病や世話をすることを『看取り』といいます。

しかし、ご家族としては、ご自宅での親御様のことが心配でしょうし、ご自分たちがどのようにサポートしたらよいのか不安を感じることでしょう。

そのサポートにヘルパー(訪問介護)を含めるなら、ご家族の負担を軽減することができます。

「ヘルパーさんはどんなことをしてくれるのか?」

という疑問を抱かれるかもしれません。

この記事では、その点について実際の訪問例と合わせてご紹介しています。

この記事は約4分で読むことができますので、是非最後までご覧いただければ幸いです。

スポンサーリンク

親御様がご自宅に戻る前に

ヘルパーに訪問してもらいたいと思っても、介護認定を受けていないと利用できません。

もしも、まだ介護認定を受けておられない場合は以下の記事をご参考になさってください。

関連記事(はじめの一歩からヘルパーが自宅を訪問するところまでを網羅しています)
・介護保険を使えるようになるために!活用までの10の道のり。認定前でも使える裏ワザあります

すでにケアマネジャーを選んでおられれば、ご自宅への帰宅について相談することができます。

ケアマネジャーは、ご本人や医療機関のソーシャルワーカーなどと相談の上ご利用者のケアプランを作成します。

訪問介護を希望されるなら、ヘルパーの訪問もケアプランに含まれます。

ヘルパーはケアプランに沿って『看取り』の介護サービスを提供します。

ご利用者やご家族の事情はそれぞれ異なるので、ヘルパーによる『看取り』の訪問といってもその内容はご利用者ごとに違ってきます

『看取り』の介護サービスは、何か特別なケアがあるわけではありません。

では、ヘルパーはどのような内容の訪問を行うのでしょうか?

ヘルパーはどのようなサポートを行うのか?

ご利用者の必要に応じて、身体面と生活面のサポートを行います。

身体面では全身や一部分の清拭、排泄介助(お手洗い・ポータブルトイレ)、おむつ交換、陰部洗浄、食事介助、水分補給、口腔ケアなどを行います。

生活面では、調理、掃除、汚物処理、洗濯、ポータブルトイレの洗浄などを行います。

ひとり暮らしのご利用者の場合、ご家族がサポートに来られるケースが多いように感じます。

ご利用者にとって『最後の』帰宅となることが多いため、忙しいお仕事を調整されサポートに来られるご家族が多い印象です。

ご家族が行うサポートの困難な部分をヘルパーに依頼することができます。
(介護保険サービスの範囲内での介護に限られます)

担当するヘルパーの心構え

clear blue shore

看取りの訪問は非常に緊張します。

多くの場合、ご利用者は末期的なご病気を抱えておられ、いつ何が起きるかわからない状況に置かれているからです。

しかし、一番緊張されているのはご利用者様であり、ご家族様だと思います。

なので、担当するヘルパーとしては、『緊張感を持ちつつ、ご利用者が少しでも穏やかな気持ちで過ごせるように心を配る』訪問を心がけています。

訪問介護事業所としては、サービス提供責任者を中心に緊張感をもってご利用者様をサポートしています。

ヘルパーとサービス提供責任者、また、サービス提供責任者とケアマネジャーの間で密に連絡を取り合い、不測の事態に備えています。

訪問する担当ヘルパーは毎回「ご利用者の人生の最期に立ち会うかもしれない」という心構えを抱きながら介護サービスを行います。
(毎日訪問の場合、複数のヘルパーが訪問するケースが多いです。情報は各ヘルパーが共有できるようになっています)

『看取り』の訪問利用ご利用者の例

shallow focus photography of red apple on gray pavement

あるご利用者への訪問例をご紹介いたします。

S様 90代男性 独居 
末期がんのため入院中だったが、ご本人の希望により帰宅
ほとんど言葉を発することはなく、声掛けにわずかにうなずかれる
食欲なく、お皿を持つのも困難
介助しトイレに行くこともあれば、おむつでの排泄もある
60代の娘様がサポートのためほぼ毎日訪問。しかし、朝の訪問は困難なためヘルパーを依頼

・ヘルパーの訪問予定
毎朝8:15~8:45訪問(月~日) ケアプラン(提供票)には『身体1』と記載

・サービス内容
身体介護・・・水分補給、食事介助、清拭、陰部洗浄、おむつ交換
生活援助・・・食事準備、片づけ

ある日の『看取り』訪問

man love people woman

S様へのヘルパー訪問の様子をご紹介させていただきます。

訪問開始

8:15訪問。

S様はベッドで寝ておられる。

ヘルパーの声掛けにかすかにうなずかれた。

すぐには起きられないので、ホットタオルを作り、声掛け後、手を拭く。

ホットタオルの作り方
1タオルを水でしめらせる(ややゆるめにしぼる)
2電子レンジで温めて出来上がり
3かなり高温になるのでヤケドに注意

排便確認の声掛けし、おむつが汚れていたらパッド又はおむつ交換をする。

必要に応じて陰部洗浄も行う。

ちなみに、陰部洗浄に使う道具は専用の物を購入しなくてもペットボトルで代用できます。

ペットボトルのキャップに何か所か穴を開けます。

お湯を入れて陰部洗浄に使います。

あらかじめバケツなどにお湯を用意しておきます。

水分補給と朝食

・準備

S様は固形物は食べられないためりんごのすりおろしを作っておく。

水分補給は介護用の吸い飲みに白湯を準備。

両方をサイドテーブルに準備しておく。

・水分補給と食事介助

起床介助し座位をとっていただく。

S様は座位はとれるがやや不安定なため、隣にに座り必要に応じて支える。

S様の手を支えて白湯を飲んでいただく。

ご自分ではお皿を持てない。

介助すると、りんごのすりおろしをスプーンにふた口召し上がった。

再びベッドに横になられるため臥床の介助をする。

吸い飲みに白湯をつぎ足し、いつでも飲めるようにサイドテーブルに置いておき、その旨S様に伝える。

S様はわずかにうなずかれる。

りんごのすりおろしの片付けをする。

訪問の記録を付ける。

ご利用者の情報共有のために『連絡ノート』を用意していただいており、必要な情報を記入する。

記入する情報 ・・・ 訪問時のご様子や水分補給量、食事量、排泄の有無など。

挨拶をし退出する。

担当ヘルパーとしての反省点

ここでは、S様への訪問に関して僕個人の反省点をのべさせていただきたいと思います。

・会話

S様についての情報はほとんどなく、会話もできないため、どのような方なのかがわからなかった。

ご様子を見る限り、お体が相当お辛そうだった。

そのため、必要なことだけを短く伝えたり声掛けしていた。

S様は一日のほぼすべての時間ベッドで横になっておられた。

何を思い、どのようなお気持ちで過ごしておられるかを考えると、といろいろ話しかけるのははばかられた。

しかし、本当は人の声を聞きたかったのかもしれない。

たとえとりとめのないことであったとしても、何かの話を聞きたかったかもしれない。

反省点としては、S様に「煩わしかったらやめますので、お話してもいいですか?」と尋ねてみればよかったと思う。

声による返事をしてもらうのではなく、ただうなずくだけで済む質問をしてみれば良かったと反省している。

『心穏やかに過ごしていただきたい』

というのは『ヘルパーがただ黙って静かにしている』のとは意味が違うことをもっと考えるべきだったと反省している。

まとめ

ここまで、ヘルパーによる『看取り』の訪問についてご紹介させていただきました。

ご利用者にとって最後の帰宅の機会かもしれないので、ご家族がお仕事などを調整されお世話に赴く方が多いように思います。

しかし、いつまで続くのか誰にもわかりませんし、すべてのことをご家族が行うのも難しいと思います。

ヘルパーを活用することによってご家族の負担を軽減することができます。

ケアマネジャーと相談しながら、必要なところをヘルパーにサポートしてもらうことができます。

高齢の親御様が、病院などからご自宅への帰宅を願うお気持ちはよくわかります。

最後の機会になるかもしれないのです。

『看取りの訪問のためにヘルパーを活用できる』という情報がその機会を開くチャンスになればと願いこの記事を書かせていただきました。

ご参考にしていただければ幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました