ご訪問いただきありがとうございます。
介護福祉士のサード・ラプソディです。@third_rhapsody
親の介護に取り組むご家族は、ひとり暮らしをされる親御様の様子を知っておきたいと思われることでしょう。
しばらく会わないうちに、
「えっ、そんなことがあったの!」とか、
「こんなことになっちゃってどうするの!」
などという『困った!』のスパイラルに入り込んでしまうことが多々あります。
この記事を通して、ご自宅でひとり暮らしをされる親御様の様子などについての情報をいち早く知る方法についてご紹介したいと思います。
それは、『ヘルパーさんに会い、直接ヘルパーさんからお話を聞く』ことです。
この記事では、以下の点を取り上げたいと思います。
・担当する訪問ヘルパーさんからどんな情報を得られるのか?
・ご家族が親御様のことで心配していることは何か?
・実際のケース紹介。ヘルパーからご家族にお伝えしたこと
親御様がひとり暮らしをされているのは何かと心配です。
親御様の介護に取り組むご家族やご本人が心配を減らしたり、状況を改善するためにどんなことができるでしょうか?
この記事では、現場のヘルパーだからこそ知っている情報があることをご紹介したいと思います。
*この記事では、介護保険を使ってヘルパーさんを依頼していることを前提としています。もしも、介護認定を受けておられない場合は以下の記事をご参考になさってください。
・介護保険を使えるようになるために!活用までの10の道のり。認定前でも使える裏ワザあります
① 親の介護に携わるご家族がヘルパーさんに会っていただきたい理由
でも、心配なことは、ケアマネージャーさんやヘルパーの責任者の方が教えてくれるから、それで十分じゃないかしら?
おっしゃる通りです。しかし、親御様に定期的に接しているのは訪問を担当するヘルパーなので、さらに多くの情報を持っていることがあるんです。
そうなんですか。私の母も一人暮らしなので、できればいろいろ知っておきたいとは思っているんだけど・・・
そうですよね。少し時間や手間はかかるのですが、訪問するヘルパーに直接会って、尋ねてみていただきたい点があります。
② ヘルパーさんに一番尋ねていただきたいこと
親の介護に取り組むご家族に、親御様についてこんなふうに尋ねていただきたいです。
「ヘルパーさんがうちの親のことで一番心配していることは何ですか?」
この質問によって何が分かるでしょうか?
『より緊急性の高い情報が得られる』
もちろん、「何も心配なことはないですよ~」と言われるかもしれません。
それなら安心です。
しかし、毎回の訪問時に親御様と会話を交わし、そばでご様子を見ているヘルパーさんだからこそ『知っていること』や『心配なこと』がある場合も多いです。
親の介護に取り組まれるご家族には、その情報を得ていただきたいです。
ご家族が、親御様についてすでにご存じのこととつながるかもしれません。
『緊急性の高い情報』ですか、そうなんですね。私も仕事があって、ヘルパーさんには最初の時に会っただけだったから、今度時間を作ってお会いしてみます。
お忙しいと思いますが、時々そうされることをおすすめしたいです。ヘルパーさんとご家族が顔なじみになっておくと、お互いに安心ですよね。
確かにそうですね。
ヘルパーさんが何曜日の何時に訪問しているかは、ケアマネージャーさんや訪問介護事業所のサービス提供責任者に連絡すれば、教えてもらえます。
でも、なんとなく電話しにくい時もあるかもしれません。
その情報は、ケアマネージャーさんが毎月持ってくる『サービス提供票』という書類に記載されています。
又は、サービス提供責任者がお持ちする『計画書』に記載されています。
ヘルパーは訪問するたびに、必ず『訪問の記録』を残してきます。その記録にも何時~何時まで訪問したのか記入します。
専用のファイルをお持ちして、そこへ毎回保存します。そのファイルの中に『計画書』もあるはずです。
③ 訪問を担当するヘルパーは貴重な情報源となる
親御様がひとり暮らしをされている場合、ヘルパーが訪問する時には一対一になります。
ヘルパーは定期的に訪問しているので、顔なじみになり、だんだんと親しくなっていきます。
普段ひとり暮らしをしておらるので、話し好きの方であれば時間が足りないぐらいしゃべりまくる方もいらっしゃいます。
そのお話しの中にはいろいろ大切な(見過ごせない)情報が含まれていることがあります。
また、気安い間柄になっているので、『素』のご様子でヘルパーに接しています。
そのご様子がヘルパーから見て『あれ?いつもとは違う』と感じることもあります。
ヘルパー以外、だれも知らない情報です。
それは確かに、別に暮らしている私たち家族には分からないことですね。
そうですね。ご一緒に掃除をしたり、調理をしたりしているからこそ分かることだったり、定期的に訪問しているからこそ違いが分かる、ということも多いんです。
うーん。なるほど・・・例えばどんなことがあるんですか?
次はその点についてご紹介しますね。
④ ヘルパーの訪問から得られる情報の例
④-1 親御様のお体の様子に関する情報
ヘルパーの訪問は毎週1回であったり、2回であったり、3回であったり、1日のうち朝と夕方だったり、ケアマネージャーさんが作成したご利用者への訪問計画に基づいていろいろです。
ヘルパーは訪問の最初に必ず、
「お変わりありませんか?」
「お体の具合が悪いところはありませんか?」
などと様子を確認するための声掛けをします。
ご利用者は、もし体調が悪ければ、率直に教えてくださることが多いです。
「食欲がない」
「夜、眠れない」
「下痢が続いている」
「腕が上がらない」
「この前転んだ」
などいろいろです。
ご利用者のタイプのよっては、何かあっても我慢して、何もおっしゃらない場合もあります。
でも、ご一緒に掃除や調理などをしている時にヘルパーが気が付くことも多いです。
(ご様子を確認したり、変化に気付くのも仕事の一つです)
例えば、
『いつもより動くのがお辛そうだ』
『息切れがしている』
『立っているのが大変そうだ』
『いつもはよくお話しするのに、今日は口数が少ない』
などです。
ヘルパーは訪問後、サービス提供責任者に、その日の訪問について報告します。
特にお変わりなければ、「お変わりありませんでした」と報告します。
もし、何かお困りになっていることがあれば、それを伝えます。
でも、その情報に対して、訪問しているヘルパーとサービス提供責任者では温度差があったりします。
実際にご利用者にお会いしているヘルパーと、言葉で報告を受けているサービス提供責任者とでは、緊急感が違っていることがあるのです。
そこから先は、サービス提供責任者の判断になります。
ご利用者のところへ電話をかけて具合をお聞きすることもあれば、ケアマネージャーさんに報告することもあります。
「これはご家族に連絡すべき」と判断することもあります。
ヘルパーからの報告を受けはしたものの、『よくあるいつものことだ』とそのままになることもあります。
もちろん、緊急な場合など、訪問したヘルパーからサービス提供責任者に「○○のことをご家族にぜひ伝えてください!」とお願いする場合もあります。
ヘルパーは毎回の訪問の際に複写式の『訪問の記録』を残してきます。
そこに、ご利用者のご様子などを記入し、一部を残していきます。
でも、あまり多くを書くスペースはありません。
それで、できれば、親御様のお宅に『連絡ノート』を用意して、ヘルパーが気が付いたことを書いておいてもらうようにしておくと、後でご家族が確認できるので、おすすめです。
(サービス提供責任者の方からご家族に「『連絡ノート』を用意してください」とお願いすることもあります。)
なるほど、ヘルパーさんの仕事の中には、利用する人の変化に気付くことや、情報をケアマネージャーさんや私たち家族に伝えることも含まれているんですね。
『連絡ノート』はいいですね。母のところにも用意することにします。
そうなんです。高齢の方の中には体調の変化が大きいこともあるので、毎回必ず確認させていただいています。情報共有は在宅介護に不可欠です。僕達ヘルパーは研修や会議の時に必ずこのことの大切さを確認しています。
そうしていただけると本当に安心です。
④-2 親御様に関する普段との違いについての情報の例
例えば、
『着ている服が先週と変わっていない、洗濯している様子もない』
『いつもは訪問する時にテレビを見ているのに、今日はベッドで寝ていた』
『ヘルパーが来ることを忘れたことはないのに、今日は出かけていた』
『いつもはきちんと服薬しているのに、お薬カレンダーに薬が残っていた』
『いつもより不安気な表情をされていた』
『いつもは何でもないことなのに、すぐに怒った』
など、定期的に訪問しているからこそ、いつもとの違いが分かることがあります。
こうした情報をご家族にも得ていただきたいです。
そうすれば、受診の際などにドクターに相談することもできるかもしれません。
④-3 家の中の状態についての情報の例
例えば、
『いつもと違い、布団が敷きっぱなしになっていた』
『ベッドのシーツが濡れていた』
『エアコンやテレビのリモコンがなくなっていた』
『コバエが発生している』
『いつもは開けている雨戸を開けていない』
『新聞を取っていなかった』
など、いろいろなことがありました。
必ず、その原因があるはずです。
ヘルパーは限られた時間しかご一緒にいられませんが、ある程度その原因に心当たりがあります。
こうした情報をご家族が得ておられれば、何か心当たりがあったり、心配していたことと一致していたりすることもあります。
何か大きなことが起きる前に、親御様に合った対策を取っておくことができるかもしれません。
⑤ 親の介護に取り組むご家族が親御様について一番知りたいことは何か?
それは『親は認知症なのではないか?』ということだと思います。
認知症については、医師でないと診断することはできません。
診断はできませんが、普段ご利用者に接していて心配になることはいろいろあります。
例えば、
『今日が何月何日何曜日か何度も何度も尋ねてくる』
『襟付きのカジュアルシャツの上から白い肌着を着ていた』
『ゆっくり話しかけても全く理解してくれない』
『トイレの床が尿で池のようになっている、異常に汚れている』
『お体から便のニオイがしているが本人は気付いていない』
などです。
こうした情報があるのとないのとでは、その後、親の介護に取り組まれるご家族の対応も変わってくるのではないでしょうか?
ヘルパーは限られた時間の中でそうした気付いた点や心配な点を記録します。
(毎回の訪問時に複写式の記録用紙に記入し、写しをご利用者宅に置いていきます)
また、『連絡ノート』が用意されていれば、そこにも記入します。
しかし、とにかく時間がないので、限られた情報しか残せません。
そこで、再度述べさせていただくのですが、実際にヘルパーに会っていただき、『何が一番心配ですか?』
と尋ねていただきたいのです。
そうすれば、ヘルパーはご利用者について、心配な点を伝えてくれます。
その情報を、親の介護に取り組むご家族に得ていただきたいのです。
その中には、すぐにでも対応しなければならない情報が含まれていることがあります。
『薬缶も鍋もフライパンも、異様に焦げている』
『台所のお湯が出しっぱなしになっていた』
『玄関は開いていたが、ご本人はお家におられなかった』
『とても食べられない状態の物を召し上がっていた』
『いつ炊いたのかわからない状態のご飯が炊飯器に入っていた』
『お手洗いが異常に汚れている』
などといった情報です。
もしかしたら『火事』『徘徊』『食中毒』『何かの病気』などの危険があるのかもしれません。
こうした情報をご家族に得ていただければ、ケアマネージャーさんと相談したり、専門の医療機関に受診するなど、何らかの対策をとったりできます。
うちの母は認知症ではないと思うけど、危ないことも多いので心配です。
そうですか。だれかに相談するにしても、情報がなければ相談のしようがないので、まずは、今どのような状態でいらっしゃるかを把握することが一番だと思います。
そうですね。手遅れになる前に、もう少し母について詳しいことを知っておくべきなんですね。
ぜひ、そうしていただきたいと思います。
次からは、実際の例を通してヘルパーからどんな情報が得られるかご紹介したいと思います。
⑥ ヘルパーからご家族に情報をお伝えした実際の例
・80代男性、ひとり暮らし
・要介護1
・認知症との診断は受けていない
・デイサービスを週2回ご利用(主に入浴目的)
・ヘルパーの訪問は昼時に1時間の訪問が週に4回(身体介護と生活援助の組み合わせ訪問)
・娘様が二人おられる。一人は車で20分程の所、もうお一人は徒歩5分程の所にお住まい
お二方ともお仕事を持っておられる
⑥-1 訪問時の様子
・その日によって異なりますが、体調をお尋ねすると、大体「悪い」とおっしゃる。
・朝食は食べていないことが多く、ヘルパー訪問の昼時に昼食をご用意すると「お腹の調子が悪い」とおっしゃるものの、完食される。
・不安気な様子や、落ち込んでいることもあるが、会話を交わしていくうちにお元気になることも多い。
⑥-2 言っておられたこと
・『時計の針がまわっているのは、オレの土地を取ろうとしている奴らが嫌がらせでやっている』
・『子供が5、6人部屋中を走り回って困っている』
・『カギがなくなった、スマホがなくなった、だれかがとった』
・『2階の人とうまくやっていきたい』
このようにおっしゃっておられたが、全部ご本人の思い込み。
⑥-3 お姿のご様子
・夏なのに、セーターを重ね着していた。
・リハパンをきちんと履けず、自分で破って腹巻のようにしていた。しかも3枚。
・靴下は左右違うものを履いていることが多い。
⑥-4 室内の様子
・テレビやこたつの線がペンチで切られていたことがあった。そのため、ご家族が新しいものを買ってくるまで見られなかった。室内は約2週間ほど無音の状態だった。
・雨戸をご自分で開けないので、昼間でも照明を点けており、薄暗い中何もすることがなく一人で過ごしておられる。電気も付けず真っ暗な中で過ごしておられることもある。
・エアコンのリモコンの操作ができないため、朝、ご家族が訪問しスイッチを入れておられた。
・8畳の寝室はあるが、そこには「知らない人が入り込んでいるので寝られない」とのことで、居間に布団を敷いて寝ている。
⑥-5 冷蔵庫や台所の様子(何を食べているか)
・ヘルパーは夕食も用意していくが、食べたり食べなかったりの状態。
・ご家族が買ってこられるお弁当を食べていることもある。
・冷蔵庫が開きっぱなしのことが多々ある。
・冷凍のおにぎりがキッチンに置いてあったが、かじった形跡があった。
⑥-6 訪問していて心配なこと
・服薬がご自分ではできない。
・水分補給が自分でできない。
・スマホや薬を捨ててしまう。
・外を出歩く。
・体調が悪くても、ご家族に具体的に説明できない。原因となる心当たりも分かっていない。
⑥-7 ご家族とお会いした機会にお伝えしたこと
わずかな時間ではありましたが、ヘルパーである僕の方から心配な点についてお伝えさせていただきました。(『訪問の記録』や『連絡ノート』にも記載しました)
その時に心配だったことは、冷凍庫が開きっぱなしだったこと、お手洗いや手、衣服が便で汚れていた状態だったため、
『お父様はお腹の調子が悪いようです、もしかしたら冷凍の物をそのまま食べてしまっているかもしれません。』
とお伝えしました。
ご家族は、すぐに親御様を医療機関に連れていってくださいました。
このように、ヘルパーと親の介護に取り組まれるご家族が連携し、『チーム』としてサポートしていければと願っています。
実際に、どのような感じでヘルパーさんを頼めるのか、以下の記事が参考になります。
もしよろしければ、お読みいただければ幸いです。
ヘルパー活用の具体例をご紹介している記事がありますので、ご参考にしてください。
・独居高齢者のヘルパー活用実例紹介。要支援認定、掃除が困難な男性の例
・独居高齢者のヘルパー活用実例紹介。要支援認定(買い物代行・掃除)
・訪問ヘルパーさんに30分来てもらう。ポータブルトイレ介助の例
・訪問ヘルパーさんに短い時間だけ来てもらいたい方向け、実際の例3選
・自宅での入浴のためにヘルパーを活用する。同居家族がいる参考例紹介
⑦ 親の介護に携わるご家族の皆様にお願いしたいこと
親の介護には、ただでさえ時間や労力がかかり大変だと思います。
でも、ヘルパーの訪問する日に訪ねていただき、会っていただければと願っています。
ヘルパーは忙しくサービスを行っていますが、わずか数分でもよいので話をし情報を得ていただきたいと切に願います。
僕個人としては、ご家族がいらっしゃる時には、なるべくお話しをするように心がけています。
時には、親御様の愚痴をおっしゃることもありますが、それも大事なことだと思います。
愚痴の一つも言えない状態だと、ストレスがたまるばかりです。
ご家族も、訪問しているヘルパーと話をすることによって安心されると思いますし、ヘルパーも心配な点をお伝えすることができます。
通いでの親の介護も難しいことがたくさんありますが、ヘルパーに会った機会に情報を得ていただきたいと思います。
⑧ まとめとして
様々な事情で多くのご利用者がひとり暮らしをされています。
訪問ヘルパーを依頼されるなら、様々な面で必要なサポートを受けることができます。
さらに、少しお手間はかかりますが、ご家族様には訪問しているヘルパーに会っていただくことによって、より『緊急度の高い情報』を得ていただくことができます。
また、『連絡ノート』を活用することによって情報を得ることもできます。
ご本人を中心にして、ご家族と介護サービス事業者が『チーム』としてサポートしていくことができることを願っています。
最後までお読みくださりありがとうございました。
コメント