ご訪問ありがとうございます。
独居の親御さんのサポートのために、訪問ヘルパーさんを依頼したい方は多くいらっしゃいます。
でも、ヘルパーさんに家の中のことをあれこれやってもらいたい場合、そんなにいろいろ対応してもらえるのかな?と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
退院したばかりで体の具合があまりよくないんだ。一人暮らしだし、ヘルパーさんに掃除も洗濯も調理も買い物も頼みたいんだけど、そんなにいろいろ頼めるのかな?
ケアマネージャーさんとよく相談して、必要だと認めてもらえれば大丈夫ですよ。息子さんや娘さんなどご家族にも同席してもらって一緒に相談される方も多いですね。
それが・・・息子も娘も家に来てくれないんだよ。
そうなんですか、いろいろご事情がおありなんですね。僕が訪問していた独居の男性ご利用者で、似たような状況の方がいらっしゃいました。どんな感じで訪問ヘルパーを活用していたのか、ご紹介しますね。
お願いするよ。
その前にちょっとだけ、ヘルパー派遣までのことをお伝えさせてください。
独居生活を送られる高齢者へのヘルパー派遣までの流れ
介護認定を受けると、介護保険サービスを利用することができます。
ケアマネージャーさんに、ご自分のお体のことや生活面の困りごと、心配なことなどをよく相談しましょう。
ケアマネージャーさんは親御さんやご家族からの情報を基に、ケアプランを作ってくれます。
そして、ヘルパーを派遣する訪問介護事業所を探してくれます。
そうなんだ、自分でヘルパーさんを探さなくていいんだね。
そうなんですよ!ケアマネージャーさんがやってくれます。でも、ご自分でも探すことができますよ
どうやって探すの?
市役所や地域包括支援センターに行って、訪問介護事業所のリストを受け取ることができます。いくつか連絡してみて、ご自分が気に入ったところを選ぶ方もいらっしゃいますね。
なるほどねぇ。今は、いろいろやる元気がないから、ケアマネージャーさんにお願いしようかな。
そうですね。後で事業所を変更することもできますので、安心してください。
ヘルパーを派遣する訪問介護事業所では、ご利用者の担当者を決めます。(サービス提供責任者と呼ばれます)
サービス提供責任者はケアマネージャーさんから送られてくるプランに基づいて、訪問介護計画を作成し、ヘルパーの手配、サービスの具体的な内容や予定を立てます。
すると、そこには、お願いしたいことが書かれているわけだ。
そうなんです。何曜日の何時~何時まで、どんな内容のサービスをヘルパーが行うかが記載されています。
なるほど、そうなんだ。その計画書を見ればみんな分かるようになっているんだね。
そうなんです。もちろん、サービス提供責任者が計画書をご自宅へお持ちした時にきちんとお話しもしますので、安心してください。
わかったよ。じゃあ、僕と同じようなケースがあるらしいから教えてくれるかな?
わかりました。順番にお話ししますね。
独居生活のため、ヘルパーにたくさん頼みたい
今回ご紹介する男性ご利用者は、「いろいろなことをヘルパーさんに頼みたい」という方です。
80代男性、2階建て住宅にて独居 要介護1
お体の状態:糖尿病、肝臓病、足がお悪く歩行が困難な時あり。会話は普通。お酒好き
ご家族:息子様、娘様がおられる。しかし、両者ともほぼ絶縁状態
ヘルパー利用回数:週に3回(身体介護と生活援助の組み合わせ1時間、随時保険外サービス)
サービス内容:掃除、リネン交換、洗濯、取り込み、調理、買い物、入浴介助、清拭、リハビリパンツ交換、トイレ介助
その他:受診やご自分で買い物に行きたい時には介護保険外サービスを利用しヘルパーが同行
なんか・・・僕と重なっているところがいろいろあるなぁ。しかし、その方はこんなにいろいろ頼んでいたんだ。
そうなんですよ。ケアマネージャーさんや僕たちヘルパー同士もうまく連携してサポートしていました。
高齢独居男性のそれまでの生活
15年程前に奥様を亡くされ、以来独居生活をされていましたが、料理を含め家事などみなご自分でなさっていました。
僕がお聞きしたところでは料理がお好きで、『煮物』『豚汁』『イカ人参(イカをさばいて、人参と一緒に煮、特製の煮汁に壺に付け込む料理のことだそう)』お正月料理、漬物など何でもこなしておられました。
お庭もきれいに整えておられ、時期になると『アケビ』が実るのを楽しみにされていました。
その後、肝臓の病気のため入院されていました。退院後、以前ほどまめに動けないものの、何とか生活されていました。
しかし、掃除や洗濯など生活環境を整えたり、身体の清潔を保つのが徐々に難しくなってきました。
たまたま訪ねてこられた娘様が、お父様の様子や家の中の状態に驚き、市役所に相談され、地域包括支援センターを通して訪問ヘルパー派遣の段取りが図られました。
ご本人としては、まだ自分でやっていけると思っておられたようですが、元々几帳面に家のことをなさっておられたのが困難になってきたので、ついにヘルパーさんをお願いしたいということになりました。
独居生活がだんだん難しくなった原因
認定調査を経て、ケアマネージャーさんも決まり、順当にヘルパーの訪問が始まりました。
初めは、生活援助の中でも、掃除のサービスだったのですが、ご本人の生活にお酒が入り込み、その量は徐々に増えていき、それに伴って生活スタイルも乱れてきてしまいました。
酒でも飲まなきゃやってられない、っていう気分はわかるなぁ。
そうですね。確かに寂しそうにされていたお姿をよくお見かけしました。
ヘルパーに手伝ってもらえるようになると、お体の調子が悪いことと相まって、今までと同じように調理に取り組んだり、買い物にも行けず、そうしたサービスもケアプランに含まれることになりました。
生活が乱れてしまった理由は、お酒の他にもありました。
それは、娘様のことでした。
お父様の入院中に、娘様が交際されていた男性にお父様の愛車を勝手にあげてしまったのです。
お父様はお怒りになり、娘様も逆切れし、以後お互いに音信不通になってしまいました。
うちとはちょっと違うけど、こっちの考えと子供たちとの考えが全然違うから、やっぱりぶつかって・・・来なくなっちゃったんだよね。
そうだったんですね。このご利用者にも、娘様にもそれぞれの言い分があったのですが、悪感情が先に立ってしまうと、修復は難しいご様子でしたね。
サービス提供責任者が娘様に電話しても出ないばかりか、折り返しの連絡もありませんでした。
かろうじて、まれにケアマネージャーさんには折り返しの連絡が入っていました。
最初のサービス担当者会議から、ご家族はどなたも参加されず、ご本人からのみニーズを聞き取り、生活面の内容をケアプランに含めるといった状態になっていました。
ところが、ご利用者の身体面の状態も徐々に悪化していきました。
失禁があったり、ご自分での入浴が困難になってきてしまいました。
ご本人からも「自分で風呂に入れない」「トイレが間に合わない」「起きられないことがある」
などの訴えがありました。
それで、再度各担当者が集まって相談し、『入浴介助』や『トイレ介助』『リハビリパンツの交換』などの身体介護もプランの中に加えることになりました。
独居生活男性へのヘルパーの訪問時の様子
いろいろとよくお話しされる明るい方です。
嫌がる様子もなく、入浴介助などの身体面のサポートにも協力してくださいました。
ヘルパー訪問時にはお酒を控えてくださるようケアマネージャーさんやサービス提供責任者から口を酸っぱくしてお願いしていましたが、なかなか受け入れてはいただけませんでした。
僕が訪問すると、甥っ子がやってきたような気やすい様子で、機嫌良く話しかけてくださいました。親近感をもっていただけたせいか、よくオヤジギャグを飛ばしていました。
ですが、お酒を飲み過ぎる日もありました。
そうした日は、ご自分でベッド上に起き上がることもできず、失禁していることも多々ありました。
呂律も回らず、きちんとした会話を交わすことのできない日もありました。
そうした日のサービスは、失禁の後始末やお体の清潔を優先して対応していました。
それだけのサービスだと、食事の準備や必要な物の買い物代行ができないことがありました。
しかし、1時間では時間が足りません。
その場合は、サービス提供責任者に連絡し、サービス提供責任者からケアマネージャーさんに状況を伝え、許可を得てから訪問の時間を延長してもらうこともありました。
又は、事前に介護保険外サービスの契約を交わし、ご本人のご了解のもと、全額をご利用者に負担していただくこともあります。)
独居生活を送るご本人へのサービス内容の例
1時間の訪問です。
ケアマネージャーさんが持ってくる『サービス提供票』には『ヘルパーが訪問する日にちや時間』が書いてあります。
そして、謎めいた『身1生1』という記号も書かれています。
これは簡単に言うと、『身体介護と生活援助を組み合わせて1時間でやります』ということです。
(身体介護と生活援助の細かい時間の割合などがあるのですが、ざっくり上記の通りです)
・『買い物代行と食事作りとトイレ掃除』
・『買い物代行と部屋の掃除とトイレ掃除』
・『入浴介助と洗濯、浴室、トイレ掃除』
・『リハパン交換後、リネンやパジャマの洗濯、リネン交換、トイレ掃除』
・『足湯、清拭の後、トイレ掃除』(入浴できなかった時の対応)
など、その都度ご利用者と相談し必要なサービスを提供していました。
トイレはいつも汚れていたので、必ず行っていました。
ご本人と相談しても、お酒が入っていたためコミュニケーションがうまく取れない時には、その状況をサービス提供責任者に連絡してからサービスを開始することもありました。
上記のような様々なサービス内容は、ケアマネージャーさんのケアプランや、サービス提供責任者が作成する計画書にも含めてあるので、組み合わせはいろいろではあっても対応可能でした。
どれもご利用者の生活に必要なサービスでした。
『身体介護』の中には、『生活援助を一緒に行う』ことも含まれているため、可能な範囲でご一緒におこなっていただきました。
ここは大変大事なところです。
介護保険サービスは、ご利用者がより重度な介護を必要としないように、自立に向かって行けることを目的として提供されるものだからです。
ですので、僕達ヘルパーがご利用者を訪問し、介護保険サービスを提供する時には、必ずお声がけをさせていただき、ご一緒に行えるように働きかけていきます。
例えば、掃除の時には、テーブルを一緒に移動していただいたり、掃除機掛けが難しければ、拭き掃除の一部を行っていただいたりします。
ヘルパーが買い物代行に行っている間に、調理の準備をしていただき、戻ったのち時間までご一緒に調理したりしていました。
しかし、介護保険では対応できないこともありました。
冬場、椅子に座って電気ストーブで足を温めているうちに眠ってしまい、やけどしてしまったこともありました。
その時は、『介護保険外サービス』にて受診の付き添いにも同行しました。
このように、本当であればご本人はもちろん、キーパーソン(主に親御様の介護に関わっておられる方)の方ともよく相談してサービスを行うのですが、娘様のご協力が得られないながらも、何とか在宅での生活が成り立っていました。
独居生活を送るご利用者への訪問ヘルパー同士の連絡方法
その日ごとに違うヘルパーが訪問するため、チームワークが求められていました。
それに役立ったのが『連絡ノート』でした。
訪問の日ごとにご利用者のお体の必要や生活面での必要を知り、優先してサービスを提供するのに役立っていました。
毎回の訪問の記録はヘルパーが持参する専用の複写式用紙に記入し、ご利用者の印鑑やサインをいただき、一部を残してきます。
各ヘルパーは訪問時に前回の記録を確認していました。
それに加えて、ご本人専用の『連絡ノート』を活用しました。
・前回訪問したヘルパーやご利用者から買ってきてほしいと頼まれた買い物のリスト
例:玉ねぎ、牛乳500ml、お米5㎏、インスタントコーヒー、台所用洗剤、トイレットペーパーなどなど
・ご本人の様子に変わったところがあったこと
例:食欲がない様子、足取りがおぼつかない、訪問時寝ていてなかなか起きなかった
・ご本人からの依頼
例:次回に布団を干してほしい。体温計を買ってきてほしい。庭の木の枝が気になるから伐ってほしい
・役所との何かの手続きの相談のこと(ケアマネージャーに連絡)
高額医療費の払い戻しの手続きなど(ケアマネージャーさん➡娘様に連絡)
この『連絡ノート』は、訪問する各ヘルパーはもちろん、定期的に訪問するサービス提供責任者や、ケアマネージャーさん、時々訪れるご家族にも確認していただくことができ、情報共有やチームワークに役立っていました。
まとめ
独居性を送られる高齢者の生活を支えるために、ご家族の協力をいただけると一番良いのですが、様々なご事情によって困難なケースもあります。
今回ご紹介したご利用者は気さくで大らかなタイプの方で、ヘルパーさんたちともすぐになじんでくださいました。
訪問介護事業所側も『連絡ノート』を活用して『チーム』としてサポートできるように努力していましたし、ご利用者の必要に応じて、様々なサービスをその日ごとに組み合わせて提供していました。
ヘルパーさんにいいろいろなことを頼みたいと思われれる場合、ケースバイケースですが、今回ご紹介させていただいた方の例のように、ケアマネージャーさんとよく相談して、その内容をプランに含めていただくようにお願いしてみてください。
なるほどねぇ。まずはケアマネージャーさんとよく相談だな。
そうですね。遠慮なく相談してみてください。そのあとは、僕たちヘルパーと一緒にお家のことなど無理のない範囲で取り組んで行きましょう。家事を行うのもいい運動になります。ヘルパーの訪問は、メリハリの効いた良い生活リズムを送っていくのにお役に立てると思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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