独居生活を送る片麻痺男性への身体介護のためヘルパー訪問。デイケアからの『迎え入れ』ご紹介

身体介護例

ご訪問いただきありがとうございます。

訪問ヘルパーとして、在宅で暮らすご利用者のサポートをさせていただいています。

独居生活を送る高齢者は多くなっています。

ご自分で身の回りのことを何でもこなされる方もいらっしゃいますが、どうしてもサポートが必要な方もいらっしゃいます。

身体面や生活面にサポートが必要であれば訪問ヘルパーを依頼することができます。

ヘルパーさんに頼めることはいろいろあります。

このブログでは、様々な訪問の例をご紹介し、皆さまのご参考にしていただければと思っています。

このようなお悩みはありませんか?

ご家族
ご家族

母がデイサービスに行くことになったんだけど、帰って来る時間には私の仕事が終わらないんです。本当は「お帰り」って迎えてあげたいし、私が帰るまでお手洗いとか心配なこともあるし・・・

サード・ラプソディ
サード・ラプソディ

そういう方もいらっしゃいます。僕達ヘルパーを活用していただくことができますよ!

ご家族
ご家族

母が帰ってくる時間に合わせて来てくださるんですか?

サード・ラプソディ
サード・ラプソディ

もちろんです。僕が訪問していた男性の例ですが、どんな感じだったかご紹介しますね。

ご家族
ご家族

お願いします。

この記事で分かること
①『迎え入れ』サービスとは何か?どんなこともやってくれるのか?
②このサービスを利用すると親御様やご家族は何が助かるのか?
③ご紹介するご利用者と打ち解けたきっかけ
スポンサーリンク

身体介護『迎え入れ』サービスとは?

fashion hand hurry outfit

今回は、身体介護の一つである『迎え入れ』と呼ばれる介護サービスについて、実際に訪問させていただいた例からご紹介したいと思います。

関連記事
ヘルパーさんを活用したいろいろな例をご紹介していますので、よかったらご覧になってみてください。
・独居の親の買い物を頼む。4つのトラブルとその対処法
・自宅での入浴のためにヘルパーを活用する。同居家族がいる参考例紹介

『身体介護』とひと言でいっても実にいろいろです。

その中に、『迎え入れ』というサービスがあります。

ご利用者が、デイサービスやデイケアサービス、人工透析などを終えたのち、家に戻って来る時間の前にヘルパーが伺っておき、親御様を『お迎え』するサービスのことです。

でも、こんなふううに思われる方がいらっしゃるかもしれません。

「自宅に帰って来るんだから、一人で大丈夫なんじゃないの?」

もちろん、問題ない方もいらっしゃいます。

「息子や娘さんが別に暮らしているなら、その時間に来ればいいんじゃないの?」

おっしゃるとおりです。

それが可能であるなら、一番良いです。

しかし、ご利用者やご家族の様々な事情によって対応が難しいケースもあります。それらの方のために訪問ヘルパーによる『迎え入れ』のサービスがあります

『迎え入れ』に加えて、ご家族が帰って来るまでの間に、親御様に必要な様々な介護サービスをさせていただくことも多いです。

例えば、

『帰って来たのち、リハビリパンツが濡れてしまっていることがある。ご自分一人では取り替えることが難しい』
『トイレの介助が必要である』
『独居であり、体調も思わしくないため、夕食の準備がご自分ではできない』
『人工透析のクリニックから、送迎の条件として、帰宅時には必ずだれかが迎えてくださいと言われている』

など、いろいろなケースがあります。

別居されていても、同居であっても、ご家族が、親御様の帰宅の時間に合わせるというのは、様々な理由で困難ではないでしょうか。

そうした事情を、事前にケアマネージャーさんとよく相談することができます。

ケアマネージャーさんが、そのサービスは必要だと認めてくれれば、ケアプランに組んでくださり、ヘルパーの派遣事業所と連絡を取り合い、ヘルパー派遣の段取りしてくれます。

ヘルパーがサービスを提供する時間もいろいろです。

『迎え入れ』の場合、最短で15分の訪問をさせていただいたことがありました。

30分の訪問のケースが多いです。

30分あれば、『迎え入れ』に加えて、『着替え』や『トイレ介助』など、必要なサービスを提供することができます。

参考情報:ヘルパー30分の訪問について
ケアマネージャーさんが持ってこられる『サービス提供票』には『身体1と記載されています。
これは『身体介護をヘルパーが1単位(20分~30分)提供する』という意味です。
ご利用者が1割負担の場合、費用は1回290円位です。
①『迎え入れ』サービスとは何か?どんなこともやってくれるのか?
・『迎え入れ』サービスとは、デイサービスなどからの帰宅時にヘルパーがお迎えのために訪問すること。

・室内への移動後、着替えや排泄介助などを頼むこともできる。
②このサービスを利用すると何が助かるのか?
・ご家族は、親御様のデイサービスなどからの『お迎えを』ヘルパーにまかせることができるので、ご自分の都合をやりくりして訪ねてこなくて大丈夫。
・同居の場合、デイサービスなどからご家族の帰宅までの時間を少しでも短くできる。
 (ご本人が一人でいる時間を短くできる)

身体介護『迎え入れ』サービスをご利用の独居男性T様について

orange flower with butterfly
T様の基本情報
家族:独居(お姉さまが2人、週に1度は訪ねて来られ、食料品など援助される)
年齢:50代後半
介護認定:要介護2
お体の状態:脳梗塞による右半身麻痺(杖歩行)
好きなこと:庭仕事、音楽鑑賞、ゲーム、映画鑑賞

T様はデイケアサービスからのお迎えのサービスを利用しておられました。

まだ60歳手前ですが、10年程前、仕事中に脳梗塞を起こしてしまいました。

救急搬送後→手術→入院生活→リハビリのために転院、その後、やっとご自宅に帰って来ることができました。

しかし、残念なことに右半身にマヒが残ってしまいました。

これまでずっと独身でお過ごしでしたが、戻られた後も、ご自分の生活のことを頑張っておられます。

使える側の左半身の機能を保持するために、デイケアサービスに週3回通っておられました。

約10年程前からデイケアサービスに通っておられますが、その最初からヘルパーによる『迎え入れ』のサービスを利用していました。

それまでは、女性のヘルパーしかいませんでしたが、今度は男の僕が入職したので、サービス提供責任者(女性)から「行ってこい」との指令を受け、訪問させていただくことになりました。

(駆け出しの頃は訪問先がなかなか増えず、なるべく男性のご利用者の所へは、僕がサービスに入れるようサービス提供責任者が働きかけてくれました)

身体介護『迎え入れ』ご利用独居男性への訪問開始

road traffic beach sand

僕が初めて訪問させていただく前に、サービス提供責任者がT様に「今度は男のヘルパーさんが来るからよろしくね」とお伝えしていました。

突然、『知らない男が自宅前にたたずんでいる』という状況を作って、ビックリさせることのないように、との配慮でした。

それまでは、なじみの女性のヘルパーさんが来てくれたのに、今度は『人生で初』男性ヘルパーが自宅にやって来ることになったのです。

T様にしても、ヘルパーとはいえ、知らない男が自宅で待っているというのは、あまりいい気持ではなかったかもしれません。

送迎車が到着しました。いよいよサービス開始です。

身体介護『迎え入れ』開始時、送迎車の中、同乗者の冷たい反応

beach blue car combi

ご利用者が降りるため、後部ドアが開きました。すると、中からこんな声が飛んできました。

「なんだ、今日は男がいるじゃねーか、ハズレだな」

「男はお断りだって言ってやれよ~」

T様も、使える左手を振りながら

「男はいいよ~」

と、あまりこちらを見てくれません。

僕もどう応じたら良いか、初めてだったためよくわかりませんでした。

それでも「今日からお迎えに伺う○○です。男同士よろしく願いします」と挨拶しました。

T様は、「男はいいよ~」と再びおっしゃりながら、車を降りました。

やはり、男性ヘルパーは珍しいです。

そして、介護職員は基本的にあまり怒ったりしないので、皆さん安心して言いたいとこをおっしゃってくださったようです。

すかさず、サービス提供責任者が割って入り、

「今日からお迎えはこの○○ヘルパーが来てくれますのでね。男性ですけどよろしくお願いしますね」と微妙な笑顔でお伝えしました。

脳梗塞による後遺症で、T様は、あまりはっきりとお話しすることができません。ですが!

「いいよ~」だけは悲しいほどはっきりと聞き取れました。杖を持つべき左手もしっかりとフリフリしていました。

その後T様は、顔なじみのサービス提供責任者とは何かお話しされていましたが、僕とは、ほんのわずかな会話しか交わしてくれませんでした。

初対面なので、仕方がないですね。

でも、せっかくT様とも関わることができるので、これからは声をおかけして、徐々になじんでいきたいと思いました。

身体介護『迎え入れ』後のケア

set of various socks drying on rope in backyard

T様へのケア内容の一つは、T様を『迎え入れ』し、体の右側が麻痺しているので、安全に室内へと移動することです。

そして、デイケアサービスで出た洗濯物を洗濯機で洗い、ご一緒に干すことも含まれていました。

T様は、右手が全く使えないので、洗濯後、僕がハンガーに干しました。几帳面な方で、靴下は2か所をピンチに挟む、シャツはハンガーに干したら第一ボタンを留める、バスタオルは蛇腹にピンチで挟んでいく、など全部教えてくださり、その通りに干させていただきました。

ちょっとでも干し方を間違えると、すぐに「ちがっ」と言われてしまいます。

週に1回の訪問です。

翌週もお迎えのために訪問しました。

送迎車がやって来、ドアが開きました。

すぐさま、他の利用者さんの声が飛んできます。

「なんだ~きょうも男かよ~」

「もう男は断っちまえよ~」

「やっぱり女がいいって言ってやれよ~」

などの声が聞こえてきました。

僕は言いました。

「○○さん。ヘルパーの○○です。男でハズレですがよろしくお願いします。あ、お車のみな様もお疲れ様でした~」

T様は先週と同じく「男はいいよ~」とおっしゃいました。

「男にもいいとこありますよ。一生懸命やりますから」

「男はいいよ~」

このような感じの訪問が何回か続きました。

身体介護の『迎え入れ』に行っているのに、『迎え入れ』られていない

person wears multicolored blazer

『迎え入れ』に伺ってはいますが、悲しいかなT様に『迎え入れ』られてはいない状態です。

その後何度か伺っているうちに、なぜか、T様より先に送迎車の人たちの方が僕に慣れてき始めました。

「今日も男か~、いつもいるな~」

「なんだ、よく見るとずい分男前じゃねーか~」

などと声をかけてくだいます。

(ちなみに、僕は、自分では『西島秀敏』さんに似ていると確信しているのですが、だれも首を縦に振ってはくれません。ファンの方ごめんなさい。)

「そんなことないですよ、帽子の方のほうがダンディーですよ」

と笑顔で応じると、

「おーそうか~、あははは」

うれしそうに笑ってくださいました。

こんな軽いやり取りをしていくうちに、同乗者の方たちと先に打ち解けた感じがしました。

そんな様子をいつも見ているからか、だんだんT様も笑顔を見せてくださるようになりました。

かたくなに発していた「男はいいよ~」も聞かれなくなりました。

身体介護の『迎え入れ』サービスに『迎え入れ』られるきっかけ

pexels-photo-157543.jpeg

T様の趣味の一つは、映画鑑賞でした。ある日、安全のうちに部屋へ入ると、テレビに何か立てかけてありました。

よく見ると、昔なつかしい『レーザーディスク』でした。

そのうちの1枚に、な、なんと『機動戦士ガンダム』が含まれていました。少年の頃大好きだったあの『ガンダム』です。

驚きました。何十年ぶりの再会か!僕はよくプラモデルを作ったんです!

僕のその驚く姿を見て、T様は何かおっしゃいました。

「***** *****」

「えっ、なんですって?」

「***** *****」

「えっ、50枚ある?50枚もレーザーディスク持ってるんですか?」

レーザーディスクは今でこそお見かけしませんが、当時1枚5千円位はしたと思います。それを50枚も!二度ビックリです。

T様は、ある背の高い家具の下から三番目の扉を指さしました。

「開けていいんですか?」

T様はうなずきました。

そっと扉を開けると、あるあるあるあるある、びっしりとレーザーディスクが並んでいるではありませんか!

映画、アーティストのライブ映像、アイドル、アニメの数々・・・

特に心を惹かれたのは『森高千里』でしたが、この点についてはこれ以上は詳しくお話ししないでおきます。(江口洋介の顔がチラつくのがいやだ!)

T様は、目を丸くする僕の様子にうれしそうな笑顔で大きくうなずいたのでした。

本当に残念なのですが、T様がおっしゃることの8~9割はよくわかりません。

T様の発言から、言葉のかけらを丁寧に拾い、そのひと言を足掛かりにして話しの流れを考え、過去の会話を参考にして想像を大きく膨らませ、至った結論を慎重にお伝えします。

するとたいがい、

「ちがっ」

と言われます。

そこで、再び頭をひねり、思いついたことを伝えると、

「ちがっ」

こんなやり取りを重ねるうちに正解が出ます。

すると、T様は『それそれ』とでも言わんばかりに左手を振り、

「せーかい」

と笑顔で言ってくださいます。

身体介護『迎え入れ』サービスご利用者に受け入れられた瞬間とは?

four men sitting on ground

今考えてみると、僕がT様の『迎え入れに迎え入れ』られたのは、あのガンダムの時ではないかと思うのです。

僕が思わず、喜びの叫びを上げたあの瞬間、お互いの垣根が取り払われたように思われてなりません。

ご利用者とお会いし、ヘルパーの側が楽しんでいる状況。これは、ご利用者のお気持ちとしては、喜ばせてあげられた、いいことをしてやったという、うれしいことの一つになるのではないかと思うのです。

この『いいことをしてあげた』『喜ばせてあげられた』ということが、実は、ご利用者を安心させ、お互いの距離を縮め、垣根を取り除けさせるものなのです。

わずかな時間の関りですが、それまでまったく知りもしない関係だったものが、あるきっかけによって笑顔を見せ合い、同じ興味のあることを話題にできる間柄に発展させられる、そういう経験ができるのは、訪問ヘルパーの仕事の醍醐味の一つです。

③ご紹介するご利用者と打ち解けたきっかけ
・T様ご本人とT様がお好きなことに関心を持ち、心からご一緒にいることをヘルパーが楽しむことができたこと。

まとめとして

サード・ラプソディ
サード・ラプソディ

いかがだったでしょうか?『迎え入れ』について少しはご理解いただけたでしょうか?

ご家族
ご家族

そうですね。私たち家族がだれも家にいなくてもヘルパーさんが時間には来てくれて、迎えてくださるんですね。安心しました。お手洗いの方もお願いできるのは本当に助かります。
でも、いろいろな方それぞれに合わせなければならないのは大変ではないですか?

サード・ラプソディ
サード・ラプソディ

いやいや、いろいろな方と出会い、関われるので楽しいですよ。介護保険サービスは本当に様々なパターンで、いろいろなサービスを提供できるので、是非皆さんに活用していただき、少しでも親御様やご家族の負担を減らすことができればと思っています。

T様と出会えたことや、打ち解けてくださった経験は大きな財産になっています。

以後、T様とは、よくわからないところもありますが、冗談を言いながら笑い合っています。

高齢者の様々な必要を考慮する時には、是非介護保険サービスによる、訪問ヘルパーの利用を含めていただければ幸いです。

何かわからないことがあれば、ケアマネージャーさんやサービス提供責任者に遠慮なくご相談してください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました