こんにちは。介護福祉士のサード・ラプソディです。
先日このようなツイートをいたしました。
二日目、入浴介助や食事介助などの『介護』が単なる『作業』となっているような気がしてとても怖かった
自分はいつでも人を人扱いしているのか?
それは何をし、何をしないことなのか?
苦悩は尽きないがこの問いかけをやめてはいけない
— サード・ラプソディ@ヘルパー屋さん男子 (@third_rhapsody) June 14, 2021
2行目にある『怖かった』という部分にフォーカスし、なぜそう感じたのか、また、そう感じた際の3つの対処方法について考えてみたいと思います。
介護士の僕はなぜ『怖い』と感じたのか?
それは、『慣れた』からです。
慣れるのはいいことのはずなのに、なぜ『怖い』と感じたのでしょうか?
ご利用者のお体に触れるのは、介護士の業務に欠かせません。
そもそも、ある程度介護業務に『慣れ』なければ仕事になりません。
もちろん、ご利用者にも『慣れ』ないと適切なケアができませんし、信頼関係も築けません。
それはそうなのですが、介護士の業務ではいつも『ご利用者の尊厳を守る』という大事な考えを含めていなければなりません。
当然と言えば当然なのですが、それを忘れさせてしまう状況があるのも事実です。
その理由として、
①『忙しい』
②『同じことを続ける』ことです。
この2つの理由ために、ご利用者の『尊厳』を脇に置いてしまっている自分に気づき『怖い』と感じたのでした。
忙しいと、ご利用者が自分でできることでも待っていられず、介護士が手早くやってしまうことがあります。
また、毎日同じことを続けていると、『流れ作業』になってしまい、声掛けやご利用者の意思確認を怠ることもあり得ます。
こうして、ご利用者の尊厳をないがしろにしてしまったのでした。
ご利用者の尊厳を置き去りにしてしまうということは、ご利用者を人間扱いしていないことを意味しています。
僕は自ら希望して介護士になったのに、介護士失格のような気がして『怖い』と感じました。
「それはお前の問題なんだから、自分で何とかすればいいだろ!」
というお叱りを受けるかもしれませんが、その通りです。
『意識的に』ご利用者の尊厳を忘れないようにする努力が必要です。
介護士にとって『怖い』という気持ちは絶対に必要
この『怖い』という気持ちは『絶対に必要』だとさえ思います。
なぜなら、自分の中に『ご利用者に対する尊厳を守るのは大切だ!』という思いがあるからこそ『怖い』と感じることができるからです。
もしも、『ご利用者のことなどどうでもいい、お給料がもらえればそれでいいんだ』などと考えているのであれば、どんなに忙しかろうと、同じ業務であろうと、その仕事が終わってお給料がもらえればいいので、それ以上の『何か』を考えることも感じることもないはずです。
ということは、ご利用者へのより良いケアや、尊厳を一層尊重しようという努力もしないことになり、最終的には人間扱いしない介護士となってしまいます。
それは絶対にイヤです!
『怖い』と感じることができたのは良かったと思います。
それは、自分が行っているケアに疑問を投げかける良い機会となったからです。
『怖い』という気持ちにどのように対処できるか?
介護士の仕事はいつも『忙しく』『同じ業務の繰り返し』である部分は多々あります。
その中でも、ご利用者の尊厳をいつでも尊重できるような努力を行うことは可能です。
いくつかの具体例を挙げさせていただきたいと思います。
対処法その① 笑顔でいる(口角を上げる)
きっと、ほとんどの介護士さんが笑顔でご利用者のケアに当たっておられると思います。
笑顔の効果については様々なところで言われていますので、ここでは一例だけご紹介させていただきます。
笑顔はポジティブな心を作ります。笑顔を作ると、表情筋活動の生理的フィードバックがポジティブな感情を喚起するという報告もあるのです。笑顔は、個人の人生を豊かにするだけでなく、周囲の人も含めた社会全体を幸せに導きます。
早稲田大学 人間科学部 感性工学の手法を用いて 笑顔の力を解説する人間科学学術院 非常勤講師 菅原 徹(すがはら・とおる)
忙しくて、単調な業務だとどうしても眉間にしわが寄ってしまう場面もあります。
忙しく動き回っているのに、いつでもニコニコ笑顔でいるのは難しいです。
でも、上記の研究によると、日ごろから口角を上げるように気を付けると自分の感情が変わってきますし、その影響は周囲にも及ぶことがわかります。
口角が上がるだけでなんとなく笑顔に見えるものです。
笑顔によって『ポジティブな心を作り』たいと思います。
そのように心の状態を整えていれば、どんなに忙しくとも、同じような業務であったとしてもご利用者にポジティブに向き合い、尊厳を尊重することができます。
対処法その② 時間の許す範囲でお話を聞く
ご利用者のお話をお聞きすると、いろいろなことを教えられます。
辛く悲しかった経験、奮闘されたお仕事のこと、お姑さんやお舅さん(又はお嫁さんやお婿さん)との難しい関係のこと、幼いころのエピソードや郷里のことなど、様々な経験を話してくださいます。
そうしたお話を伺うと、ご利用者に対する感情はだんだん変化し、お互いに感情的な結びつきを持つことができます。
同情したり、感情移入したり、推察したり、介護士の側はご利用者の感情に自分の感情を寄り添わせるようになります。
こうした努力は、ご利用者の尊厳を尊重するための一歩となっていきます。
時間の許す限り、ご利用者からお話をお聞きし、お気持ちに寄り添うように努力することによって『忙しさ』や『慣れ』に負けない感情的な結びつきを持つことができます。
対処法その③ お惜しみなく褒める
お話しをお聞きしているとご利用者に対して『尊敬』できる点や『ぜひ見習いたい』と心動かされる点があります。
そのことを褒め言葉にして率直にお伝えしましょう。
「○○さんは本当にお優しい方ですね」
「○○さんのそういう親切なところを見習いたいと思います」
「○○さんの自分を犠牲にしても他の方のことを優先させる姿勢を尊敬します」
など、なるべく具体的にお伝えしましょう。
褒められていやな気持になる方はおられませんし、うれしく思われることでしょう。
何より、ご利用者を敬う気持ちを言葉にしてお伝えすることによって、介護士側がご利用者を尊重する気持ちを高めることができます。
その積み重ねによって、ご利用者との間柄は緊密なものとなり、信頼関係という絆が生まれます。
信頼関係が築かれるなら、どんなに忙しかろうと繰り返される業務であろうと、喜んで行うことができます。
『○○さんのために最善を尽くしたい』という気持ちを持ちながら業務を行うことができます。
まとめ
ここまでの内容をまとめます。
僕は施設での研修の際、ご利用者へのケアに慣れ、それを『怖い』と感じました。
ご利用者に対するケアが単なる『作業』になっているような気がし、ご利用者の尊厳を軽くみなし、人間扱いしていないのではないか?という恐れを抱いたからです。
確かに、介護業務の現場は2つの点でご利用者の尊厳を尊重しづらくさせてしまうことがあります。
①忙しい
②同じことを続ける
しかし、努力することによってそうした状況にあってもご利用者の尊厳を尊重することができます。
その対処方法は
対処方法その① 笑顔でいる、口角を上げる
↓
ご利用者にポジティブに向き合うよう心を整え、尊厳を尊重することができる
対処方法その② 時間の許す範囲でお話を聞く
↓
ご利用者の感情に寄り添うことによって、忙しさや慣れに負けない感情的な結びつきを作ることができる
対処方法その③ 惜しみなく褒める
↓
信頼関係という絆を築くことができ、ご利用者のために最善を尽くそうと心が動かされる
この3つの努力を重ねることによって、ご利用者のことを尊重していないのではないか?という『恐怖』を退けることができます。
そして、お互いに信頼関係を結び、忙しく難しい介護業務の中でも、喜びややり甲斐を一層増し加えることができます。
介護のお仕事に取り組まれるすべての皆様に敬意を表します。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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