ご訪問いただきありがとうございます。
介護福祉士のサード・ラプソディです。
今回ご紹介するのは、『寝たきり状態』『独居生活』の方へのヘルパー訪問実例です。
ご本人の強い希望により入所先の施設からご自宅に戻ってこられました。
「寝たきりのなのに、一人で暮らせるの?」と思われるかもしれません。
訪問ヘルパーを活用することによって可能になっていました。
もちろん、僕たちヘルパーだけではなく、訪問看護師の方、訪問診療の医師の方も関わっておられました。
この記事では特にヘルパーの訪問にフォーカスし、ご様子を紹介したいと思います。
ご本人はお家のことはもちろん、ご自分のお体(食事・排泄・入浴・着替えなど)に関係したこともおできになりません。
男性ヘルパーとしてこれまで、約4000回程の訪問を重ねてきましたが、この方ほど心配になるケースはありませんでした。
もしかしたら似たようなご事情の方、ご家族の方もいらっしゃるかもしれません。
この記事は、どうしてもご自宅で過ごしたいと希望されるご本人、自宅に帰らせてあげたいと思われるご家族の方が、事前に、帰宅後の生活をイメージされる点でご参考になると思います。
1 独居ご利用者の状況・状態
Y様は70代半ばの男性です。『要介護5』の認定を受けておられます。
すでに奥様は亡くなっておられ、独居生活を送っておられました。
タクシーの運転手をされている息子様が、車で15分位の所に住んでおられ、通っておられます。
介護老人保健施設(老健)に入所しておられたのですが、どうしても自宅に帰りたいと息子様を説得し、戻ってこられました。
帰って来ると、いろいろと息子様に頼みたいことがあるようでした。
しかし、息子様の勤務体制の関係で、Y様の希望通りに来てもらえないことが多く、イライラされていることがありました。
息子様は、Y様の頼みごとだけでなく、ケアマネージャーさんとのやり取りや、利用している各事業所の担当者との打ち合わせなどにも対応しなければならず、ご自分の持病のこともあり、お辛そうなご様子でした。
Y様は、知り合いの方と崖での作業をされていましたが、突然崖が崩れてしまい、落ちてしまった時に頸椎を損傷され、体が動かなくなってしまいました。
両腕の肘はわずかに動かせますが、その他は全身にわたってご自分で動かすことができず、物を持ったりすることもできません。食事や水分補給はヘルパーの全介助となっています。
両足は拘縮(変形し、その状態のまま固まってしまう)しています。
ほぼすべての時間をベッド上で過ごしておられます。寝返りも打てません。
それで、尾てい骨やかかとの辺りに褥瘡(床ずれ)ができないように、ドーナツ型のクッションや座布団、タオルなどをあてがったり、定期的に体位を変えたりしています。
会話は問題なく交わすことができます。
お話し好きな方で、郷里での幼少期のエピソードや、若い頃なさってこられた仕事のお話し、亡くなった奥様と頑張ってこられた事業の成功談など楽しそうに聞かせてくださいました。
2 独居ご利用者へのサービス内容
・訪問看護
・訪問診療
・お弁当の配達サービス
この記事では『訪問介護(ヘルパー)』のご利用についてご紹介します。
ケアマネージャーさんはY様や息子様と相談し独居生活のためのプランを立ててくれました。
(月)~(日)まで、朝・昼・夕・夜、一日4回のヘルパーの訪問です。
1か所の訪問介護事業所では十分な数のヘルパーを確保することができなかったため、僕の所属する事業所を含め、2か所の訪問介護事業所と契約し、サービスを受けることになりました。
必要なサービスは以下のようなものでした。
起床の声かけ・バルーンの処分・オムツ交換・清拭・体位変換・水分補給・食事準備・食事介助・服薬介助・口腔ケア(歯磨き)・着替え(必要時)・体温測定・空調調節・洗濯・その他
オムツ交換・清拭・水分補給・体温測定・車椅子への移乗・食事準備・食事介助・服薬介助・口腔ケア(歯磨き)・ベッドに戻る・着替え(必要時)・体位変換・空調調節
ご本人の希望で、昼食は車椅子に座って召し上がることになり、移乗の介助をしていました。
夕方の訪問まで時間が長いので、Y様と相談の上空調管理に注意しました。
オムツ交換・清拭・水分補給・食事準備・食事介助・口腔ケア(歯磨き)・体位変換・服薬介助・着替え(必要時)・空調調節・洗濯物取り込み・たたむ
オムツ交換・バルーン処理・水分補給・体位変換・着替え(必要時)・空調調節・朝食準備
朝の訪問時は、朝食を作る時間がないので、前の日のうちに用意しておきます。
ご家族が朝食を用意してくださることもありました。
連絡ノートの活用
2か所の訪問介護事業所からヘルパーが派遣されていたり、他の職種の方も訪問していたので、息子様に連絡ノートをご用意いただきました。Y様に関係するすべてのスタッフがご様子について気付いた点や、注意事項、息子様へのお願い、などを記入し情報共有できるようにしました。(バイタルや排便の有無、尿量などの情報は、訪問看護さんが用意してくださった用紙に記入していました)
毎回の訪問時に必ずノートをチェックしていました。
Y様がお好きなお茶やレトルト食品、トロミ剤の在庫の確認やゴミの廃棄のこと、Y様が希望されていたことなどを息子様に伝えるツールになっていました。
ご家族とヘルパーとのコミュニケーションに役立っていました。
事業所をまたいだヘルパー同士でしたが、「洗濯機を回したので干してください」など、こまごまとした連絡事項を伝え合う点でも活躍していました。
3 独居ご本人や訪問のために必要な物、あった方がいいと思った物
2 宅配弁当 (必要な物)
3 クリップシャツ (あるといい物)
4 全開パジャマ (あるといい物)
5 室内カメラ (あるといい物)
順番にご紹介します。
3-1 鍵番人(必要な物)
ヘルパーが訪問しても、ご本人は歩けないので玄関まで出てくることができません。
それで、息子様が玄関のドアノブに金属製のボックスを取り付けてくださいました。
これなら、カギを何かの入れ物に入れて、どこかに隠すよりも安心です。
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カギ番人という商品です。
ボックスの中に玄関の鍵を入れることができます。
4桁の番号を合わせて開けるようになっています。(好きな番号に変更可能です)
L字レバーのタイプによっては、輪っかの部分がレバーから抜けてしまうことがあるのですが、この商品は輪の中にもう一つ部品が付属してあり、それをかませることによってレバーから抜けない構造になっています。
各事業所に番号を周知し、いつでも玄関を開けることができるようにしていました。
3-2 宅配弁当(必要な物)
ヘルパーが手作りの食事を用意する時間はありません。
ケアマネージャーさんから配食業者さんに、12時頃お弁当を届けていただくよう依頼してありました。
届いたお弁当を温め、飲み物と共に召し上がっていただきました。
ちなみに、多くの場合、ケアマネージャーさんとお付き合いのある配食業者さんにお弁当を依頼することになります。(費用はだいたい1食500円程です)
本当はたくさんの業者さんがあるのですが、ご利用者もご家族もあまりご存じないので、ケアマネージャーさんの紹介してくれる業者さんになりがちです。
ご参考までに、ぼくのおすすめを紹介します。
メディミールは管理栄養士と医療専門チーム(看護師・理学療法士・言語聴覚士)によって監修されているので、安心して召し上がっていただけます。
しかも、管理栄養士が常駐していて、制限食や食生活についての電話での相談を受けてくれています。
国産中心の素材を自社工場で手作りしています。
食生活は毎日の積み重ねなので、少しでもより良い物を選んで召し上がっていただきたいと思います。
費用もあまり変わりません。
写真をクリックするとホームページにジャンプできますので、もしもご関心がおありでしたら参照されてください。
3-3 クリップシャツ(肌着)(あるといい物)
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部屋の中はエアコンで空調管理をしていますが、どうしてもベッドで横になっておられると背中などに汗をかきます。
ヘルパーが着替えを行う機会も多いです。
Y様は腕をご自分で動かせず曲がったままの状態です。普通の肌着だとどうしても、お体に負担をかけながらの着替えになってしまいます。
クリップシャツは前開きの肌着なので、頭はほぼ動かさなくてもよく、腕もゆとりをもって通すことができます。
着替えは毎日のことですし、お体への負担もあるので、洗い替えを含めて何枚か用意していただくと良いと思います。
3-4 全開パジャマ(あるといい物)
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全開パジャマは便利です。
Y様は排尿の処理のために『バルーン』を装着されていました。
陰部から管を出し、その管はベッドの柵に吊り下げられた専用のパックに流れます。
普通のズボンだと、管をズボンの腰の上から出すことになります。
すると、ズボンをしっかりはくことができません。
この全開パジャマは、サイドにファスナーが付いています。
必要な部分だけファスナーで開けることができます。
バルーンの管をパックへの最短距離で出すことができます。
ズボンもウエスト部分までしっかりと持ち上げることができます。
医療機関への受診時も、ファスナーを開ければ先生に必要な部分だけ見ていただくことができます。
3-5 室内カメラ(あるといい物)
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室内カメラがあれば、必要な時にスマホでご様子を確認することができます。
息子様がY様のご様子を心配され、Y様の様子がよく見えるように、天井付近の棚に取り付けられました。
ただし、Y様には内密とのことで、僕たちヘルパーもカメラについては言及しませんでした。
いつでもスマホでご様子を確認できるので、息子様も少し安心しておられたご様子です。
4 ご利用者の反応
Y様は、念願のご自宅に戻ってくることができ喜んでおられました。
ケアマネージャーさんが手厚いプランを立ててくださり、気持ちよくそのサポートを受けておられました。
僕たちヘルパーが訪問するたびに丁寧に感謝の言葉を述べてくださいました。
エアコンの操作やテレビのチャンネル変え、水分補給も思うようにできないなど難しいところもありましたが、それらを補って余りあるとおっしゃっておられました。
大変残念だったのですが、3ヶ月程経ったところで、息子様の体調が悪くなり、入院して手術が必要な状態になってしまいました。
それに伴ってY様もご自宅にいることができなくなり、やむなく施設に入所されることになりました。
「まったくついてない」とがっかりされていました。
5 独居ご利用者への訪問で難しいと思った点
お弁当の到着が遅れてしまい、ヘルパー訪問時間の中でサービスが終わらないことがありました。
ヘルパーは次の訪問先へ、時間通り向かわなければなりません。
その場合は、サービス提供責任者(ご利用者の担当責任者、ご利用者ごとに必ず一人付きます)に連絡し、状況を伝えます。
Y様が食事などできないと困るので、Y様の訪問を優先し、サービス内容を終えるまで時間を延長していました。
次のご利用者へは、他のヘルパーが訪問できるように責任者が段取りしていました。
配食業者さんも時間の約束のことは聞いていたものの、交通事情などによって予定通りの時間に配達できないことがあるとのことでした。
夏場、お昼の訪問から夕方の訪問までの間、室内には徐々に西日が当たってきました。
窓や障子は閉めているものの、どうしても室内の温度は上がってしまいました。
室内が暑くなることを見越して設定温度を低めにするのですが、それでも予想を超えて暑くなる日がありました。
夕方に訪問すると、汗びっしょりになっていることがありました。
かといって、設定温度を低くし過ぎると、お体にタオルケットをお掛けしても寒くなってしまいます。
オート機能を使っても、空調管理は難しいことの一つでした。
ヘルパーがいない時は、飲むことができませんでした。
それで、息子様が工夫され、ベッドの柵に吸い飲みを取り付けられました。
初めはよかったのですが、そのうち角度が変わってしまって吸い口に届かなくなってしまったり、うまく飲めずにこぼしてしまい、着ているものや周辺が濡れてしまうこともありました。
これが一番心配でした。
お一人でいる時間が長いです。
もしも、何か緊急事態があってもご自分でだれかに連絡することができません。
Y様も「心配だ」とおっしゃっておられました。
6 まとめ
短い期間ではありましたが、Y様のご希望通り、自宅に戻ってくることができました。
ヘルパーを依頼し、配食サービスや室内カメラを活用することによって、『寝たきり』且つ独居生活のご利用者をサポートすることができていました。
息子様のご尽力も大きかったです。
ですが、お体を悪くされるなどご負担も大きかったご様子でした。
『ショートステイ』などを利用して、ご家族も休めるように(レスパイトケア)できたならさらに良かったのかもしれません。
様々なサービスやアイテムを活用することによって、ご本人にとってもご家族にとっても、よりやりやすい形で介護に取り組むことができると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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