介護福祉士として訪問ヘルパーの仕事をしているサード・ラプソディです。
ご利用者に上のように言われたことがありました。
入職後1ヶ月ほど経った頃です。
まだ見習い期間だったので、先輩の女性ヘルパーと一緒に訪問させていただいた時のことです。
そのご利用者は、80代男性です。今にも倒れそうな貸家に一人で住んでいました。
外には塗料の缶や刷毛などの道具などが置かれていたので、塗装屋さんを営んでおられたようです。
足がお悪く、引きずるように歩いていました。
顔を合わせてご挨拶するなり、言い放たれました。
非常にショックでした。
自分としては、住み慣れたご自宅での生活をされるご利用者のお役に立ちたいと思って、数ある介護関係の仕事の中でもあえて『訪問介護』を選びました。
しかし、最初からそれを直接的に拒否し、一度の会話を交わしたこともないのに全否定されようとは思いもよらず、強烈なパンチをお見舞いされたような感じがしました。
先輩ヘルパーが、「いい方なんですよ」と、とりなしてくださったのでですが、その親切がかえって惨めさを誘うような、やりきれないものを感じました。
1時間の訪問でした。先輩ヘルパーの指示のもと掃除など行わせていただいたものの、その後、ご利用者とは一度も目を合わせることも、言葉を交わすこともありませんでした。
その方を担当するサービス提供責任者としては、僕が訪問できるところを増やそうとしてくださったのですが、結局、そのご利用者のところにはその後も訪問することはできませんでした。
「男がヘルパーをやっているなんて、どうせろくでもない奴だ!」
という言葉は、心に刺さったトゲのように、その後も時々チクチクすることがありました。
原因についていろいろと悩まさせられました。
『ご挨拶の時に、笑顔を作ったものの、引きつっており誤解を招いたのか?』
『その後は声をかけるのを遠慮していたのが、かえっていけなかったのか?』
『ご利用者がおっしゃる通り、自分はろくでもない奴なのか?』
悩みました。
『上から鳥の糞が落ちてきた』ぐらいの、軽い事故だったというような感じでゆるく流せればいいのですが、キャラクター的にそうもいきませんでした。
その後、しばらくは新しい訪問先はもちろん、どのご利用者のお宅へ行くのも怖くなってしまいました。
しかし、その後も新しくお伺いするご利用者は増えていきました。
その度に『また、何か言われるのではないか?』と心配になりました。
上司からは『顔を合わせる最初の3秒が肝心」と言われていました。
なるべく自然な笑顔を心がけるようにしました。
「こんにちは!」から始まる3秒を大事にしました。
でも、自然な笑顔は意外と難しいものです。
少し、考え方を変えました。
訪問ヘルパーは、ご利用者のお宅を訪問します。
家の中に定期的に入る人とはどんな人だろう?
それは、家族や親戚、親しい友人などだと思います。
訪問ヘルパーは、そのどれでもありません。
でも、毎週のようにお会いするので、そのような気持ちで伺ってもいいのではないか?と思いました。
『近所の甥っ子が世話を焼きにやって来た』といった感じで伺おうと思いました。
そんな風に思うと、なんだか少し気持ちが楽になるような気がしました。
そして、自分でも意外なほど笑顔に違和感がないと感じることができました。(実際、ご利用者がどう捉えたかはわかりませんが・・・)
自分の中に、ご利用者に対する温かな気持ちを抱くと、不思議と相手もその気持ちを受け取ってくださるように感じました。
いろいろとお話しをしてくださり、相づちをうちながら一生懸命お聞きしました。
しばらく経つと、ご利用者から「息子みたいに思っている」とか「弟みたいなもんだ」「また来てね」と言っていただけるようになりました。
うれしかったです。
本当にうれしかったです。
『男がヘルパーをやっていていいんだ』と思えるようになったのは、ひとえに、ご利用者のおかげです。
いくら感謝してもしきれません。
まずは自分の中から『ご利用者とヘルパー』という垣根を取り壊し、敬意を示しながらも親しみを込めて声かけしたいと思います。
そして、お話しを真剣にお聞きしたいと思います。
ご利用者との良い関係はそこから生まれてくることを学ばせていただき感謝しています。
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