一家の主が便失禁をしてしまったのですが、奥様を含めご家族が下の世話をしないで済んだ例があります。
一体どのように対応したのでしょうか?
今回の記事では、介護認定も受けておられない状況の中で、家族が失禁してしまった時にどのように対処できるかについて実際の例をご紹介したいと思います。
介護保険を利用されていなくても、介護保険外サービスによるヘルパー訪問を活用することによって、ご家族は手を下すことなく、親御様のお世話に対応することができます。
① 親御様がお元気なうちに、認定調査を受けておく。
② 近くのケアマネージャーさんを調べ、顔なじみになっておく。
③ 訪問介護事業所(ホールヘルパー)の事業所と介護保険外サービスの契約をしておき、1回でもいいのでヘルパーを利用してみる。(顔をつないでおく)
④ ヘルパー派遣の契約を結んでおく
・ご利用者の状況
・ご家族の様子
・ご利用者への対応
・ご家族の方にご提案したい点
・まとめ
失禁後の世話をだれに頼むか?
➡ ヘルパーに頼む
どうやって頼むか?
➡ 方法1 ケアマネージャーさんを通して頼む
➡ 方法2 直接訪問介護事業所に連絡して頼む(介護保険外サービス利用)
以下に、僕が実際に訪問させていただいた事例をご紹介します。
1 ご利用者の状況
1-1 大量の軟便失禁
キレイな話でなくて申し訳ありません。でも、こういうこともあるのです。
ご本人は70代の男性です。奥様と二人暮らしでいらっしゃいました。
自宅のベッドで休んでいる際に、大量の軟便失禁をしてしまいました。
体調が悪かったようです。ご自分で起き上がってトイレに行くことができませんでした。
お風呂に行ってご自分で洗うこともできなければ、奥様が連れていって洗って差し上げることもできませんでした。
困った奥様は息子様に連絡され、息子様もすぐに駆け付けてくださいました。
しかし、ケアの仕方など分からず、困っておられました。
ヘルパーを利用していればその訪問介護事業所に連絡できたのですが、全く考えたこともなかったため、どこに相談したらよいのかも分かりませんでした。
たまたま近所に居宅介護支援事業所(ケアマネージャーさんの事務所)があり、息子様が連絡されたところ在籍していたケアマネージャーさんが来てくれました。
ケアマネージャーさんは状況を見て、付き合いのある訪問介護事業所(訪問ヘルパーの事業所)に連絡してくれました。
介護認定も受けていなければ、ケアマネージャーさんも決まっておらず、訪問介護事業所との契約ももちろん交わしていませんでした。
本来は、それらを済ませてからヘルパーの訪問が開始されるのですが、今はそのような猶予はありません。
今回は『介護保険外サービス』という形での訪問になりました。
連絡を受けた僕が緊急対応ということでお伺いしました。
1-2 ご利用者の状態
ベッドに仰向けになっておられ、動くことができませんでした。
腰や背中の周りには大量の軟便失禁が広がっており、パジャマやシーツなども汚れていました。
声をかけると何とかお返事は返してくださるものの、ご自分でお体を動かすのは困難なご様子でした。
1-3 準備
いろいろと必要な物があります。以下のような物をご家族様のご協力も得て準備しました。
ちなみに、ヘルパーのサービスは、お家にあるものを使わせていただきケアを行います。
身体介護の場合、清拭に使うタオルやおしりふきなどの消耗品もご用意いただくことになります。
(ちなみに、生活援助の場合も同じように、お家にあるものでサービスを行います。)
お湯
ソープ
タオル
500mlペットボトル(キャップに穴をあけるとシャワーとして使える!)
着替え
シーツ
使い捨て手袋
おしりふき
オムツ
お声がけするとお返事がありました。
これからお体をきれいにして、着替えていただくことをお伝えしました。
一部、便が乾いて固まっているところがありました。
奥様のご協力を得、バケツのお湯を何度も取り替えて、お体を拭きました。
『おしりふき』や『オムツ』はお持ちでなかったのですが、サービス中に息子様が買ってきてくださいました。
市販されているこのようなおしりふきで十分です。
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ベッドで過ごされる時間が長い方は、普通のオムツタイプの方が漏れが少ないです。
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ご自分で履き替えられる方には、リハビリパンツ又はリハパンと呼ばれるタイプがおすすめです。
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パッドも合わせて使うと効果的です。リハパンやオムツの中にはさんでおけば、パッドを交換するだけでお取替えが済むことも多いです。
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いろいろご紹介しましたが、近所のドラッグストアで様々な種類のオムツやパッド、おしりふきなどを扱っています。
陰部洗浄に特に便利なのが『500mlのペットボトル』です。
キャップの上部に何か所か穴をあけます。そうすると、シャワーのようにお湯を出すことができ、お尻などにお湯をかけながらきれいに洗うことができます。
以下のような介護用品もありますが、ペットボトルで十分です。
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2 ご家族の様子
お湯を沸かしていただいたり、タオルを用意していただくよう伝えると、快く応じてくださいました。
オムツやおしりふきなどお持ちでなかったのですが、息子様が買い出しに行ってくださいました。
おしりや背中などを清拭する時にはお体を傾けなければなりませんが、奥様にもお手伝いいただきおさえていただきました。
3 ご利用者への対応
お声がけすると、なんとかお返事してくださいました。
これからお体をきれいにすることや、お体を左右に動かしていただくことなど伝えると、わずかにお返事くださいました。
まずは、汚れてしまったシーツを取り除きます。
その後、ごみ袋を割いてシートにし、バスタオルと共にお体の下に敷きます。(その後の洗浄の際、お湯をかけて洗うので、辺りがびしょびしょにならないようにしておきます)
ちなみに、便利な使い捨て防水シートもあります。陰部洗浄の時にお尻の下に敷いて使ったり、睡眠中のオムツからの尿漏れ対応によく使います。
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上記のペットボトルやハンドソープを使って、何度もお湯をおしりや陰部にかけながらきれいに洗っていきました。
皮膚が弱くなっていることがあります。タオルでふき取るのですが、ごしごしふくのではなく、優しくぽんぽんたたきながらふき取っていきます。
パジャマの上下やシーツなども取り替える必要がありました。
何度もお体を左右に動かしながら交換しました。
3-1 介護保険外サービスの費用について
約1時間程サービスは終了しました。
通常の介護保険であればご負担額は1割であれば466円ほどで済むのですが、介護保険外サービスのためご利用額はで2500円程でした。
ちなみに、介護保険外サービスの費用は事業所ごとに違います。
もっと高いところが多いようです。
サービス内容によっても異なり、『生活援助』と『身体介護』で費用が変わってきます。
4 ご家族の方にご提案したい点
これからの親御様の在宅生活を考える時に、介護福祉士として必要ではないかと思う点をご紹介したいと思います。
特に独居生活を送られる高齢者の方が多くなってきました。
ご夫婦であっても、老々介護となっているケースが多く、突発的な状況に対応できないことが多いです。
それで、今のところ親御様はお元気でいらっしゃるとは思いますが、今後のことを考えて以下の点をおすすめしたいと思います。
4-1 早めに認定調査を受ける
親御様の下の世話はもちろん、突如難しい状況が起こった時に、ご家族がすぐに対応できるとは限りません。
すぐに相談できる先を確保しておくことは大切です。
上記の例のようにケアマネージャーさんを通してヘルパーを派遣してもらうことができるケースもあります。
もしも、認定調査を済ませており、訪問介護事業所とヘルパー派遣の契約を交わしていれば、直接、訪問介護事業所にヘルパー派遣を依頼することができました。
この方がずっと早いですし、安心です。
なので、何かお体や生活面で心配なところがあるなら、又は、そうしたことがなくても、とりあえず早めに認定調査を受けることをおすすめしたいと思います。
親御様は、こんなふうにおっしゃるかもしれません。
「まだまだヘルパーの世話になんかならない」
「一人で何でもできるから大丈夫」
しかし、いつ、どのような状況で他の人の手助けが必要になるかはだれにもわかりません。
その時に困るのは親御様です。
そして、ご家族です。
介護保険は認定調査を受けてからでなければ使えません。(例外あり:関連記事参照)
なるべく早く認定調査を受けることをおすすめしたいと思います。
4-2 近くの居宅介護支援事業所(ケアマネージャーさんの事務所)を調べておく
ケアマネージャーさんはヘルパーさんの責任者(サービス提供責任者)と強いパイプを持っています。
サービス提供責任者はケアマネージャーさんからご利用者を紹介してもらうので、たとえ突発的な依頼だったとしても断りにくい雰囲気があります。
また、訪問介護事業所のサービス提供責任者もヘルパーさんであり、ご利用者やご家族の力になりたいと思っておられます。(そうした強いモチベーションがないととても務まらない仕事です!)
親御様のお住まいの近くに、居宅介護支援事業所があるか是非調べていただきたいと思います。
インターネットで最寄りの居宅介護支援事業所を探すことができます。
または、地域包括支援センターに電話して教えてもらうこともできます。
そうすれば、何かの時にすぐに相談することができます。
僕も経験がありますが、すぐに相談できる先があるのは本当に安心です。
4-3 一度ケアマネージャーさんに会っておく
もう一歩進んでおすすめしたいのは、この点です。
今のところは親御様にそれほど緊急な心配事はないかもしれません。
しかし、もしも、親の下の世話など、面倒を見るのが困難だと思われる方は、是非、親御様がお元気なうちに居宅介護支援事業所(ケアマネージャーさんの事務所)を訪れ、顔なじみになっておかれることをおすすめしたいと思います。
将来的にケアマネージャーさんを選びたい旨伝えておくことができます。
今すぐヘルパーさんを利用しなくても、生活に便利な福祉用具のレンタルなどもたくさんあるので、そうした物を利用することができます。
例えば、介護用ベッド、手すり、杖、歩行器、シャワーチェアーなどなど
認定調査後、認定結果の記載された手帳を持参すれば、何をどれほど使うことができるか紹介してくれます。
4-4 近くの訪問介護事業所を調べておく
緊急事態のことを考え、訪問介護事業所を調べておくことができます。
インターネットで検索することもできますし、地域包括支援センターに電話して教えてもらうこともできます。
お知り合いになった居宅介護支援事業所から教えてもらうこともできます。
是非、『介護保険外サービス』を実施しているか?確認しておいていただきたいと思います。
もしも、実施されている事業所であれば、『介護保険外サービス』の契約を結んでおき、実際に何かサービスを依頼しておきたいです。
例えば、受診の同行、草取り、ガラス掃除、電球交換(これらは皆『介護保険』では対応できないことになっています)など、お願いできるかもしれません。
そこで、おすすめしたいのは以下の点です。
訪問介護事業所とヘルパー派遣の契約を結んでおき、サービスを開始しておくことです。
親御様の状態にもよりますが、親御様やケアマネージャーさんと相談し生活面や身体面でヘルパーのサポートが必要な点を探し、是非活用していただきたいと思います。
例えば、『要介護』認定でも『要支援』認定でも買い物代行サービスを利用できるかもしれません。
ヘルパーが親御様に代わって生活必需品を買ってきてくれるサービスです。
すでにヘルパーを利用しておられれば、突発的な状況が生じた時に、訪問介護事業所が対応してくれます。(いつもお願いしているサービス内容と違っていても大丈夫です)
実際僕も、独居男性が便失禁をされてしまい、急遽、臨時での訪問をさせていただいたことが何度もあります。
訪問介護事業所と契約しているご利用者であれば、責任をもって何度でも対応してくれます。
5 まとめ
親御様が失禁されるというのはご本人はもちろん、ご家族にとっても辛い出来事です。
たとえご自分の親御様とはいえ、下の世話は誰にでもできることではありません。
親御様にとっても、ご家族に世話してもらうのは避けたいと思われるかもしれません。
介護認定を受けていなくても『介護保険外サービス』によってヘルパーさんを派遣してもらうことができます。
いつ、どのような状況で起こるかわからないので、お元気なうちに認定調査や居宅介護支援事業所を探すこと、訪問介護事業所を探すことなど、できることをすすめておくなら、緊急な状況になった時にすぐに相談することができます。
早いうちに訪問ヘルパーを活用し、身体面や生活面でのサポートを受けることをおすすめしたいと思います。
そうすれば、『もしも』の時にご家族が対応しなくても親御様のお世話を頼むことができます。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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